執筆者
ぶん皮膚科クリニック
院長文 省太
資格
- 日本皮膚科学会認定専門医・指導医
- 難病指定医
- 臨床検査技師
所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚病理組織学会
アテローム(粉瘤・ふんりゅう、アテローマとも呼ばれます)は、皮膚の内側に袋状の構造物ができ、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)や皮膚の脂(皮脂)が、袋の中にたまってしまってできた腫瘍(嚢腫)の総称です。
たまった角質や皮脂は袋の外には排出されないので、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。
身体のどこにでもできますが、特に顔、首、背中、耳のうしろなどにできやすい傾向があります。やや盛り上がった数mmから数cmの半球状のしこり(腫瘍)で、しばしば中央に黒点状の開口部があり、強く圧迫すると、そこから臭くてドロドロしたネリ状の物質が出てくることがあります。
ほとんどのアテロームは、医学的な腫瘍の種類(分類)でいうと表皮嚢腫と呼ばれるもので、これは毛穴の上方部分(毛漏斗部)が陥入して袋状構造物ができると考えられています(表皮化成)。つまり、袋の部分は表面の皮膚(表皮)と同じ構造をしています。
表皮嚢腫は毛の生えない手のひらや足の裏にもできることがあり、この場合、小さな傷がきっかけとなって生じ、イボウイルスが関与していると考えられています。「角質(垢)や皮脂が皮膚の内側にたまる」ということで、「不潔にしているから生じる」と誤解する人がいますが、それは関係ありません。ほとんどのアテロームの原因、つまり、なぜ袋状構造物ができるのかについては未だはっきりわかっていません。
外毛根鞘性嚢腫や多発性毛包嚢腫(脂腺嚢腫)というものもアテロームの一種です。外毛根鞘性嚢腫は頭部に生じることが多く、表皮嚢腫よりかたく触れます。多発性毛包嚢腫(脂腺嚢腫)は、腕や首、わきにたくさんでき、内容物はマヨネーズのような黄色いドロッとした物質で臭いはありません。
一般的に表皮嚢腫は毛穴の上方部分の皮膚が陥入して発生すると説明しましたが、毛のない足の裏や手のひらにも表皮嚢腫ができることがあります。これは外傷性表皮嚢腫と呼ばれ、皮膚の一部が小さな外傷や手術の傷により皮膚の内側に陥入してできるといわれています。このタイプの表皮嚢腫の発生にはヒトパピローマウイルスというイボウイルスが関与していることがわかっています。
足の裏の表皮嚢腫はつねに自分の体重で皮膚の内側へ押し付けられているので、ほかの部位にできたアテロームと異なり、皮膚の外側に盛り上がってくることはありません。そのため皮膚の内部のしこりとして触れることが多く、タコやウオノメと勘違いされていることがあります。
アテロームの治療は部位や症状等によって異なります。良性腫瘍なので、炎症を伴わず、痛みなどの自覚症状がなければ、特に治療をせずとも構いません。しかし、外観的に問題になる場合や外的刺激を受けやすく、将来的に炎症や破裂を生じる可能性が高いと考えられる場合は、外科的に切除します。
通常のアテロームでは、表面の皮膚を紡錘形に切開して、嚢腫のみを摘出します。巨大なものでなければ、局所麻酔による日帰り手術が可能です。
局所麻酔をして、表面の皮膚開口部にトレパン(ディスポーザブルパンチ)という直径4mmほどの円筒状のメスを刺し込み、表面の皮膚とともに袋状構造物の一部をくり抜きます。くり抜いた後、内容物をもみだしながら袋そのものもできるだけ取り除きます。基本的に傷の部分は縫い合わせず、開放創として治癒させます。
切除手術に比べると施術時間が短いという長所がありますが、完治までの日数は長くなります。へそ抜き法は手のひらや足の裏の表皮嚢腫や炎症を繰り返し、周囲の組織との癒着が強い場合は適応になりません。
炎症を伴い、赤みや腫れ、痛みが強い場合には、緊急にアテロームの表面皮膚を切開して、嚢腫内の膿性内容物を排出させることを優先します。
アテロームは基本的に良性の腫瘍ですが、非常に経過が長く、サイズの大きなものや炎症を繰り返したものは、ごくまれに悪性化(がん化)したという報告があります。具体的には、中高年齢層の男性の頭部、顔面、臀部の大きなアテロームでは注意が必要で、「急速に大きくなる」「表面の皮膚に傷ができる」などの特徴があるようです。
注意した方がよいものにこのような皮膚腫瘍があります。鑑別は皮膚科専門医に相談されることをおすすめします。
生まれつき存在し、まゆげから上まぶたの部分と頭によくできます。アテロームと比べると、柔らかくブヨブヨしています。アテロームよりも皮膚の深いところに存在し、骨に癒着しています。
いずれも生まれつき存在する嚢腫です。側頸嚢腫は首の横側にでき、嚢腫は頚動脈の近くまで深くはいりこんでいます。正中頸嚢腫は首の中央ののど部分にでき、嚢腫は舌骨というのどの骨に癒着しています。耳前瘻孔は耳の前上方に小さい穴があいており、耳の軟骨まで続く袋状の空洞ができています。
ひどい虫歯や歯周病の部分にたまった膿みが皮膚を通して排出される病気です。下あごによくできます。歯科治療をさきにしっかり行うことが重要です。
おしりの中央、割れめの、やや上方に小さな穴があいており、中に毛がはいっています。太って、毛深い男性によくできます。
小児、若年者の顔、首、腕によくできる良性腫瘍です。大きさはアテロームと同じぐらいですが、アテロームより硬く、表面が少しゴツゴツしています。
ひとつの毛穴に黄色ブドウ球菌という細菌が感染して膿がたまります(膿瘍)。皮膚の内側に袋状構造物はありません。炎症性アテロームに似ています。