執筆者
ぶん皮膚科クリニック
院長文 省太
資格
- 日本皮膚科学会認定専門医・指導医
- 難病指定医
- 臨床検査技師
所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚病理組織学会
脂漏性角化症は「老人性イボ」とも呼ばれる、イボ状の皮膚疾患です。最も一般的な良性皮膚腫瘍のひとつとして知られています。
体中どこにでもできますが、特に顔や首に多いのが特徴です。好発部位は顔面、体幹、頸部の順となっています。
大きさは2mm〜2cmほどで、円形や楕円形をしています。表面はスベスベもしくはカサカサとしており、痛みはありません。
しかし、脂漏性角化症は時間の経過とともに大きくなるため、肥大化したイボが指や衣類に当たって出血したり炎症を起こしたりすることがあります。
脂漏性角化症の原因は、紫外線です。
皮膚が長年日光に晒されることで、紫外線により皮膚の遺伝子に異常が発生します。分子レベルでは、特定の遺伝子の活性化変異が高頻度に検出されており、表皮角化細胞の異常増殖の原因とされています。また、加齢に伴う皮膚の抗酸化能力低下も病態に関与しています。
異常が発生した細胞は増殖し、皮膚を盛り上がらせます。さらに、色素細胞を刺激することで色が濃くなります。
このような方は脂漏性角化症ができやすいため注意が必要です。
そのほか、遺伝によって脂漏性角化症の発症確率は変化すると考えられています。
脂漏性角化症は、ほとんどの場合、観察するだけで診断できます。
しかし、典型的な脂漏性角化症でなかったり不確かだったりする場合は、以下の流れで診断します。
症状や病歴を確認します。
患部を視診します。
ダーモスコープ(拡大鏡)で患部を詳細に観察します。ダーモスコピー検査では、脂漏性角化症に特徴的な「脳回様パターン」「コメド様開口部」「粟粒様嚢胞」などの所見が観察されます。これらの所見により、悪性黒色腫や基底細胞癌との鑑別診断が可能となり、診断精度が大幅に向上します。それでも脂漏性角化症と診断できない場合は、皮膚組織の一部を採取して病理検査をします。
脂漏性角化症になったら、自分で取らず医師の診療を受けましょう。自分で取ると、再発したり感染症にかかったりする場合があります。
脂漏性角化症は、厳密にはイボではないため
市販薬は効果が期待で
きません。
脂漏性角化症の治療方法は主に3つあります。
液体窒素による冷凍凝固療法は、脂漏性角化症の第一選択治療として国際的に推奨されており、治療成功率は約85〜90%と報告されています。-196℃の液体窒素により病変部を凍結し、細胞を破壊します。
皮膚科のクリニックであればほとんどのところで受けられる治療法で、費用も比較的安価です。ただし、治療時と治療後には強い痛みがあります。
また、治療部位には半年〜2年程度、色素沈着が残るのが欠点です。
レーザー治療には、以下のような種類があります。
レーザー治療は、痛みや治療痕が少ないことがメリットです。
ただし、再発リスクが高く、保険適用外で治療費用は全額自己負担になることに注意しましょう。
外科的治療では、メスでの切除や電気メスでの電気焼却などの方法が取られます。ただし、再発リスクが高く、治療痕が残る可能性もあるので、最初からすすめられることは少ないです。悪性腫瘍が疑われる場合には外科的治療が検討されることもあります。
脂漏性角化症を防ぐためには、紫外線を避けることが大切です。
年齢が若い方でも、日頃から紫外線対策を行うことで、脂漏性角化症の発症リスクを低減できることが報告されています。
脂漏性角化症は良性の腫瘍ですが、次のような変化が見られた場合は早めに受診してください。
気になる症状がある場合は、自己判断せず皮膚科専門医が在籍している当院までご相談ください。
いいえ、脂漏性角化症は木酢液では取れません。
木酢液には医学的な有効性を示す根拠はなく、むしろ化学熱傷や皮膚炎のリスクがあります。脂漏性角化症は自分で取らず、医師の診療を受けましょう。自分で取ると、再発したり感染症にかかったりする場合があります。
はい、脂漏性角化症は若い人にもできることがあります。
20〜30歳代での発症も報告されており、家族歴がある場合や紫外線暴露の多い環境では発症リスクが高くなります。若い人にできる脂漏性角化症は、遺伝の影響が大きいと考えられており、首やこめかみ、腹部などによく発症します。
いいえ、脂漏性角化症はイボをとる市販薬では取れません。
イボは通常、ウイルスによって発症しますが、脂漏性角化症は皮膚にできる良性腫瘍のため、厳密にはイボではありません。脂漏性角化症に効果が期待できる市販薬はないため、自分で治療することは難しいです。
薬で治療しようとせず、当院までご相談ください。適切な治療方法(液体窒素、レーザー治療、外科的治療など)をご提案いたします。