執筆者
ぶん皮膚科クリニック
院長文 省太
資格
- 日本皮膚科学会認定専門医・指導医
- 難病指定医
- 臨床検査技師
所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚病理組織学会
軟性繊維腫(なんせいせんいしゅ)とは、皮膚にできる良性の腫瘍です。主に首周り、脇の下、まぶた、鼠径部(足の付け根)など、皮膚が薄くて柔らかい部分や、しわや摩擦が多い部位に発生しやすいできものです。
一般的に「首イボ」「脇イボ」と呼ばれることも多く、30代以降の方に多く見られる皮膚の変化として知られています。
軟性繊維腫は、肌色から茶色、時には黒っぽい色をしており、皮膚から盛り上がった柔らかい突起物として現れます。触ると弾力があり、痛みやかゆみを伴わないことがほとんどです。
大きさは数ミリメートルから数センチメートルまでさまざまで、なかには茎(くき)のような形で皮膚からぶら下がっているものもあります。
この皮膚腫瘍は良性であり、放置しても健康上の問題を引き起こすことはほとんどありません。がん化するリスクも極めて低いとされています。
軟性繊維腫は、ウイルス性のイボとは異なり、他人にうつることはありません。また、近くの皮膚に感染が広がることもないため、その点では安心していただけます。
特に首周りは人目につきやすい部位であり、夏場に首元を出す服装をする際に気になったり、ネックレスが引っかかったりするなど、日常生活においてストレスを感じる方も少なくありません。衣類やアクセサリーが引っかかって不快感を覚える方、また多発して美容上の悩みとなっている方が多いのも事実です。
注意: 自己判断で処理しようとすると、出血や感染症を引き起こす可能性があるため、必ず医療機関で適切な診断と治療を受けることをおすすめします。
軟性繊維腫は、大きさや形状によって細かく分類されています。
最も小さいタイプで、大きさは1〜2ミリメートル程度です。皮膚からの隆起が少なく、平坦または軽く盛り上がった形状をしています。色は肌色から薄茶色が一般的で、首やデコルテ周辺に多数発生することが多いです。一つひとつは小さくても、10個以上、場合によっては数十個も多発することがあります。
アクロコルドンよりもやや大きく、1〜5ミリメートル程度のサイズで、皮膚から明確に飛び出している形状が特徴です。茎のような細い部分で皮膚とつながっており、引っ張ると取れそうに見えることがあります。
注意: 自分で引っ張って取ろうとすると出血や感染のリスクがあるため、絶対に避けてください。スキンタッグは放置していると徐々に大きくなることがあります。
スキンタッグよりもさらに大きなもので、5ミリメートルから数センチメートル、まれにそれ以上になることもあります。茎のある有茎性のものが多く、皮膚からぶら下がるような形状をしています。大きくなると衣類との摩擦で炎症を起こしやすくなったり、ねじれて血流が悪くなり痛みを伴ったりすることがあります。
軟性繊維腫の正確な発生メカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
20代後半から30代にかけて発生し始め、40代以降になると顕著に増加する傾向があります。年齢を重ねるにつれて皮膚の弾力性が低下し、皮膚の構造が変化することが関係していると考えられています。
首周りはネックレスや衣類の襟、脇の下は下着など、継続的な摩擦や刺激が皮膚の線維組織の増殖を促し、軟性繊維腫の形成につながると考えられています。
家族に軟性繊維腫ができやすい人がいる場合、同様の体質を受け継いでいる可能性があります。
長年にわたる紫外線曝露は、皮膚の老化を促進し、軟性繊維腫の発生リスクを高める一因となっていると考えられています。
これらも軟性繊維腫の発生に関与していると考えられています。
軟性繊維腫の診断は、主に日本皮膚科学会認定専門医による視診によって行われます。特徴的な外観を持つため、多くの場合は視診のみで診断が可能です。
他のイボ(脂漏性角化症やほくろなど)との鑑別が難しい場合や、悪性腫瘍の可能性を除外する必要がある場合には、ダーモスコピー検査や病理組織検査を実施することがあります。
正確な診断のためには、日本皮膚科学会認定専門医による診察を受けることが大切です。自己判断で治療を行うと、適切でない処置によって問題が生じる可能性があります。
軟性繊維腫は良性腫瘍であり、放置しても健康上の問題はほとんどありませんが、見た目が気になる場合や不快感がある場合には、除去することが可能です。
マイナス196度の液体窒素を患部に当てて凍結させ、イボの組織を壊死させる治療法です。
治療時には冷たさと軽い痛みを感じます。治療後、患部は黒くなり、1〜3週間後に自然に脱落します。小さなイボであれば1〜3回程度の通院で除去可能です。
医療用のハサミを使用して、イボを根元から切除する方法です。特に茎のあるタイプに適しています。小さなイボであれば麻酔なしで行うこともでき、即座に除去できます。
高周波の電流を利用して、イボを焼灼する方法です。局所麻酔を行った上で実施します。切除と同時に止血もできるため、出血がほとんどありません。1回の治療で確実に除去できます。
大きな軟性繊維腫や、病理検査が必要な場合に行います。局所麻酔を行い、イボを切除して縫合します。手術時間は約20分程度で、健康保険が適用されます。
イボの組織を蒸散させて除去する方法です。多数のイボを一度に治療したい場合などに適しています。出血が少なく、傷跡が比較的きれいに治りますが、自費診療となります。
どの治療法が最適かは、イボの大きさ、数、形状、発生部位、患者様のご希望などによって異なります。医師と相談の上、最適な治療法を選択することが大切です。
治療後は適切なケアを行うことで、傷の回復を早め、傷跡を目立たなくすることができます。
治療した部位に再発することは稀ですが、軟性繊維腫ができやすい体質の方は、新たなイボができる可能性があります。
軟性繊維腫を完全に予防することは難しいですが、次の対策で発生リスクを軽減できる可能性があります。
日焼け止めを首やデコルテにも塗る、日傘や帽子を使用する
ネックレスなどのアクセサリーの長時間着用を避ける、肌に優しい素材の衣類を選ぶ
首やデコルテも顔と同様にスキンケアを行う
バランスの取れた食事と定期的な運動
これらの予防策を実践しても完全に予防できるわけではありませんが、
皮膚の健康を保つことで発生リスクを軽減することが期待できます。
いいえ、軟性繊維腫は他の方にうつることはありません。軟性繊維腫はウイルス性のイボ(尋常性疣贅)とは異なり、皮膚の線維組織が増殖してできる良性腫瘍です。感染性はありませんので、安心してください。
はい、軟性繊維腫は良性の腫瘍ですので、見た目が気にならないのであれば、放置していても健康上の問題はありません。ただし、衣類やアクセサリーに引っかかって不快感がある場合や、見た目が気になる場合は、治療を受けることができます。
治療方法によって異なります。液体窒素療法、ハサミによる切除、電気焼灼法、外科的切除などは保険適用となります。一方、炭酸ガスレーザーによる治療は保険適用外となります。くわしくは診察時にご説明いたします。
治療方法により異なります。
小さなイボをハサミで切除する場合は麻酔なしで行うこともできますが、電気焼灼法や炭酸ガスレーザー治療では局所麻酔を使用しますので、治療中の痛みはほとんどありません。液体窒素療法では冷たさと軽い痛みを感じますが、多くの方が我慢できる程度です。
いいえ、軟性繊維腫は市販薬では取れません。
イボを取るための市販薬は、ウイルス性のイボに対して作られています。軟性繊維腫はウイルス性のイボではないため、効果は期待できません。また、自己処理は感染や出血のリスクがありますので、必ず医療機関で適切な治療を受けてください。